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michi suwa

精神

晴れて暖かい。

先週末、イメージフォーラムで『精神0』を見ることが出来た。そして今日、プライムビデオのレンタルで前作『精神』を見た。コラール岡山の診療所を中心に広がる作業所、喫茶、宿泊施設、談話室のような待合室の様子、患者の生活、生活保護、行政や製薬会社との関わりなどが描かれる。描かれる、というより、監督の「観察映画」という言葉通り、控えめに構えたカメラの前で起こる事から、それぞれの事情を見ているこちらも伺い知ることになる、と言った方が近い。ドキュメンタリー映画には、当然ながら、その前と後に続く圧倒的な時間と逃れがたい現実がある。最後に映し出された追悼という文字に、あらためてその事を思い知らされる。映画の中盤、作業所の配達の牛乳を受け取る芳子さんの姿が、ちらっと見えた。彼女が山本医師の夫人であることも『精神0』を見た後で無ければ分からなかっただろう。『精神0』のもうひとりの主役は間違いなく芳子さんだった。人間として生きていれば自然に纏ってしまうあらゆるものが剥がれ落ちて、丸く小さくなった芳子さん。微笑み続ける、あの伏し目がちな目の奥に湛えた哀しい光が忘れられない。