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michi suwa

本江さん

本江邦夫先生の訃報。

色々思い出される。

学部4年生の時、本江先生のゼミをとった。ゼミ生は私を含めて3〜4人だった。大抵は先生の研究室で、ゼミ生が自作について話したり、取り上げたい話題を持ち寄ったりして、色んな話をした。先生とゼミ生と一緒に鎌倉や吉祥寺へ展覧会を見に行ったこともあった。アトリエで制作の手を止められず、ゼミに行かないでいると、先生から電話がかかってきた。だから、あの1年はほぼ毎週先生に会っていたと思う。子どものようなストレートさのある方だったから、誰からも慕われるといった先生像からは遠かったかもしれない。友人に何故あの先生のゼミをとっているのかと問われる事もあった。

先生が私を呼ぶ時、ちょっとふざけたイントネーションで、必ずフルネームで呼んだ。スワミチのワがやたら高い。去年、学内で十数年ぶりにお会いした時も、同じイントネーションでスワミチと呼んだ。

そんな先生は、ゼミの中で私が自作について発表した時、褒めてくださった。作品についての拙い説明を最後まで黙って聞いた後、あなたは既に作家だと言ってくれた。今思うと恥ずかしい酷い質のカラーコピーで作品を見せたのだが、こんなカラーコピーでもただごとではないのは分かると言ってくれた。この言葉がその後何年も私を支えた事は間違いない。

何かのキッカケで、父について先生が知った時、じゃあ褒められない、もっと頑張りなさいとおっしゃった。掌を返して急に褒める人はたくさん会ってきたが、先生は逆だった。それはそれで、ハハハと内心笑ったが、現実は先生のおっしゃった通りだ。

勝手に思い出を書き連ねる失礼を、どうかお許しください。

ご冥福をお祈りします。