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michi suwa

有原さんの絵

朝はなかなかの大雨。止みそうになったところで家を出たが、少しぶり返して降られた。

両国と六本木、恵比寿のいくつかのギャラリーへ。

両国駅、並ぶ力士の手形に手を当ててその大きさに驚くというのも当たり前の光景では無くなったのかなと思いがら改札を出て、タクシーでART TRACE GALLERYへ向かう。ギャラリーの前の道で、今回の都知事選のポスター掲示板を初めて見た。想像以上にカオス。

有原友一さん、「ふるまいとピント」展。有原さんの仕事は、一見すると抑制された条件の中で淡々と続いているように見える。なので、絵の印象が大きく変わる事は無い。が、それが全くもって、問題ですらないことに、まずピシャリとやられる。一点一点向かい合うと、どうだこの瑞々しさは、揺らぎの中のこの緊張感。変わる変わらないというのは、有原さんの絵の前では天気の話くらい空回りする言葉なのではと思う。でも、空回り覚悟で気になる変化をいくつか書きたい。グレーが現れた。このグレーが、描きを遅らせながら、多元的な描きを引き寄せる。あと、サイズとの関係。描きがサイズに応えているのか、サイズが描きに応えているのか、画面に向かうたびに問い直されているよう。その関係を相対化するだけでは足らない。タイトルにある「ピント」をヒントに画面を追ってみる。合ったと思ったら同時に外れる。それは失敗かもしれない、でも続ける。ふとまた合うピント、外れる。向きが変わったり、ぶつかったり、大きな刷毛目に拐われたり、地の肌理に弾かれたりしながら、追いかける。何を?ふるまいを?ひときわ密度の高い緑の絵は、これは本当にいつまでもいつまでも見ていられる。隣には赤い絵がある、赤は他の色に引き継がれず、白が少しずつ、僅かに茶が絡む。目が地をどんどん青く染める。これもまた新鮮な体験だった。絵を描くことが引き起こす瑞々しい驚きにこれ程満ちた展示はなかなか無いと思う。見に行って本当に良かった。一軒目でへとへと。

http://www.gallery.arttrace.org/202004-aihara.html